雑学自由帳

日々の学びから趣味まで幅広く。理系院卒の駆け出しエンジニアがちょっとしたクイズ・雑学をメインに執筆します。

【50音雑学 「き」】 ちょっとマニアック?な物理化学用語を勉強してみましょう!

問題

 

 Q1. Debye相互作用、London相互作用とともにファン・デル・ワールス力の一部となっている、2つの極性分子が接近した際に生じる永久双極子同士の相互作用のことを何という?

 

 

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Keesom相互作用

 

Q2. 原子、分子、原子核のエネルギー準位間の遷移で、ある近似の下では起こらないはずなのに実際には別の効果で弱く起こるもののことを何という?

 

 

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禁制遷移

 

Q3. 吸収スペクトルを計測した際に、分子振動の中でも倍音の吸収帯が多数観測される領域である、可視光よりも波長の長い光の波長領域のことを特に何という?

 

 

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近赤外領域

 

 

 

 

 

 

 

 

雑学

 

 

A1. Keesom相互作用

 めちゃくちゃ平易に言うと、分子の中のプラスの電気とマイナスの電気が、他の分子の中の電気と引き合ったり斥けあったりする力、という感じです。Keeson相互作用は永久双極子同士の相互作用のことで、分子間距離の6乗に反比例、温度に反比例する特徴を持つ、ファン・デル・ワールス力(この単語は高校で習いますね)の一部です。問題文中にあるDebye相互作用は双極子-誘起双極子相互作用、London相互作用は誘起双極子-誘起双極子相互作用を表します。

 

 

A2. 禁制遷移

 原子や分子がエネルギーを獲得すると、安定した基底状態から不安定な励起状態へと遷移します。その際のルールを選択律といいますが、そのルールを破っちゃう場合もあるわけで、それが禁制遷移と呼ばれるものです。なぜ破れるのか?というと、選択律はとっても簡単な場合だけを考えていて、完全に現実世界の物質を記述できていないからです。例えば注目している分子のすぐ近くに他の分子がいたら、その分子と相互作用して微妙に分子の持ちうるエネルギー状態が変わってしまいます。そういった、選択律を考える際に近似した事項にズレを与えるような事象が起きている故に禁制遷移が観測されるのです。ちなみに、禁制遷移でない遷移、すなわちルール通りになっている遷移のことは許容遷移と呼ばれます。

 

 

A3. 近赤外領域

 赤外線という言葉は日常生活でも耳にすることがあると思いますが、物理化学の分野では特に遠赤外領域・中赤外領域・近赤外領域の3つに分けられることが多いです。遠赤外というと調理法だとかサウナなんかで耳にすることもありますね。遠赤外領域では分子間の振動やライブレーション運動、中赤外領域では分子内の伸縮・変角運動、近赤外領域では振動の倍音・結合音が主に観測されます。

 

 

 今回は特に化学系の人が大学で習うような事項について書いてみました。高校までの勉強だけではなかなか分からないですが、大学での化学と物理って勉強するほどどんどん境目がなくなっていきますよね。物理化学という分野は名前からしてまさにその中間領域といった感じで、非常にchallengingで面白い学問になっています。 

 ちなみに今回の作問にはストーリーがあります。一問目では分子間に生じる相互作用について。二問目はそういった分子間相互作用などに由来する近似の崩れが引き起こす禁制遷移について。三問目は禁制遷移の代表である倍音・結合音の観測領域である近赤外領域について。ちょっとしたこだわりでした。

 

 たまにはこんな理系らしいブログも書いていければ、と思います。次回はどんなお題にしようかな。